八王子平和強化月間のイベントの一つとして、あぶない教科書を許さない市民の会主催で「ゼロから学ぶ教科書採択」が開催されました。

今年は、小学校の教科書採択の年であったため、教科書を事前にチェックし、教育委員会を傍聴した八王子の元教員の方々からの報告が最初にありました。そのあとで俵義文さんの講演です。

Ⅰ 八王子からの報告

(教科書)

国語では、平和教材が減っている。昔は低学年で「かわいそうなぞう」などがあったのに、今回は1、2年の平和教材がなくなった。

社会科で、戦争の事実について、以前に比べて簡単な記述になっている。ある部分ではよい記述があるものの、同じ教科書で他の部分で問題のある記述となっている。

文科省が伝統文化を書くようにということで、教科書会社が自主規制しているのではないか。

(採択方法)

10年ほど前から教科書採択にあたって各学校の意見が通らない。順位がつけられず意見がどの程度反映されたかわからない。

デンマークでは、どんな教科書を使うかは担任が決める。日本でも昔は学校ごとに決めていた。現在、図の並べ方がよいかどうかなどで教科書が決められている現状が空しい。子どもにとって何がよいか、原点に返って考えなければいけない。

(教育委員会)
教育委員会を傍聴して、ある教科書は、「家庭というものはこのようなもの」と押し付けているのではないかという意見が一人の教育委員からあったが、教育委員会の中では論議にもならなかった。

Ⅱ 俵さんの話

教育基本法が変わり、学習指導要領が変わって、格差教育・競争教育が強化されたということと、愛国心や道徳心、伝統文化、奉仕の精神をすべての教科書に載せるということになった。

格差教育というのは、いわゆる「できる子」には徹底して教育するものだ。教科書のページが増え、内容が増えているにも係らず時間数は少ししか増えて いない。内容の難しいものは「できる子」だけに教えようとしている。教科書は1年では終わらない。文科省は教科書観を変えるといっている。

教科書会社は編集趣意書で、愛国心をどこで教えているか対照表を提出しないといけない。教科書会社にとって無理にも愛国心を入れなければいけない状況になっている。

教科書の採択制度に一番の問題がある。韓国や中国では学校ごとの採択、ヨーロッパでもそうだが、使用義務はない。イギリスでは教科書会社があるわけでなく、出版社が自由に発行し、自由に採択している。

教員は、本来国民に対して直接責任を負っている。音楽家の楽器や板前の道具、大工の道具は自分で選べて当たり前だが、教員が使う教科書はそうなっていな い。教育委員会は事務を執行、管理するところで、教科書を採択するという権限を持つというのは、文科省が勝手に解釈しているに過ぎない。

歴史を振り返ってみると、戦前・戦中は国定教科書だったが、戦後に教育基本法ができ、1947年にはクラス単位で教師に選択権があった。1956年には教育委員が公選制から任命制に変えられてしまった。

その後、学校ごとの採択に変わり、1990年ごろまでは都下においては、全部の学校の先生が集まって集約していた。

1996年に規制緩和小委員会で学校単位の採択にすべきということで、事務方に説明をしたところ、小委員会にも呼ばれて宮内さんらに説明をした。広 域採択がよいという文部省の意見を全部論破した結果、1996年12月には学校単位の採択にするという意見書を小委員会から政府に出し、1997年3月に は閣議決定もされた。

しかし、文科省は閣議決定の内容を実施せず、つくる会が状況をひっくり返した。2000年8月の参議院予算委員会では文部大臣が閣議決定違反の答弁もしている。

つくる会は4年前には1000人以上の正会員がいたが、最近の総会は70人ぐらいの人しか集まらず、70代の人が多い。もはや市民運動としてはでき ないので、市長や議員への働きかけをするはず。我々としては、国会答弁をとることが重要だと考えている。来年で終わりになる運動をしたい。

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残念ながら出席者が少なかった。できるだけ人数が多く見えるところから撮影。

Ⅲ 参考&感想

8月11日に、教科書を決めたときの教育委員会議事録が最近になってアップされました。

八王子市教育委員会会議録

宣伝が不十分だったことが大きいですが、人があまり集まらなかったことがさびしい。以前は、教科書問題を主に活動している人が何人もいらしたのに、最近はそうでもないようなので、何か工夫をしないといけないようです。

あぶ八「ゼロからまなぶ教科書採択」

あぶ八「ゼロからまなぶ教科書採択」」への1件のフィードバック

  • 2015年8月16日 2:42 PM
    パーマリンク

    当時のコメントを平文で掲載します。
    ————————————————–
    DongDong様 (平和雅子)
    2010-11-20 05:13:44
     ご無沙汰しています。あぶ八メールで、いつもぶれないDongDongさんの姿勢に敬服し、刺激をもらって居ます。
     ブログもつくっていらっしゃるのですね。このあぶ八「ゼロから学ぶ教科書」のページ、これは、DongDongさん個人のブログなんですね?
     スマートだし、Sさん(?)や俵さんの話がよくまとまって分かりました。つくる会は、もう70人しかいない?
     でも敵は、つくる会というより、分からんチンの文科省、国会議員と思う。 我々がしなければならないことは、終わりが見えない。

     八王子教育委員会で、教科書問題で活動する人達について語ってくれた委員て、誰なのですか?(嬉しいね)

     DongDongさんのブログのこのぺージだけでなく、他のページも検索したけれど、うまく見つけられなかった。どうしたら、読めますか?
     
     私もブログを作りたいなーと最近思うようになりましたが、技術が無くて、今のところ諦めています。では又、お元気で。

    平和雅子さん (DongDong)
    2010-11-25 22:51:56
    このブログで最初にコメントしていただきました。有難うございます。
    八王子からの報告は一人ではなく、三人の話をまとめたものです。
    「八王子教育委員会で、教科書問題で活動する人達」の話が出た訳ではありません。Ⅲにある最後の段落だと思いますが、ここは今回のイベントに対する私の感想です。判りにくくて申し訳ありません。
    ブログの他のページは、左側にある「最近の記事」や「バックナンバー」というところからたどっていただければお分かりになると思います。
    ブログを作るのは、私も初めてで、最初は簡単な入門書を見ました。まわりでブログを作っている人がいて、聞くことができればそれほど難しくないと思います。

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