群馬県の片品村に行って来ました。当初八王子との関係がわからなくてブログに書くつもりはなかったのですが、片品村の当たり前の生活が大事だと言う高校生たちに出会って関係に気づき、書くことにしました。
Ⅰ 不耕起の畑
最初に訪ねたのは、キリヤマさんとセトヤマさん(ブログiikarakan で自己紹介されています。最新号(No.3)の季刊地域 の表紙を飾りました。)が不耕起で作っている畑。
作業前、奥に人家が見える。
片品村では、いのししなどの獣害に悩まされているとのことですが、ここは人家に近く比較的獣害を受けにくいのだそうです。今まで、いくつかの畑を見たことがありますが、不耕起(参考:不耕起栽培(ウィキペディア) )というのは今回初めて見ました。
大豆畑の草取り
一緒に行ったメンバーが2つに分かれて、大豆の畝の間と玉ねぎの苗床の草取りをしました。
草取り後。写真では殆ど判らないが、真ん中の大豆の両側に土があるのが作業の証拠。
玉ねぎの苗床は草をとった後土を盛り上げていく
一通り終わった後は、山に近い別の畑へ行って夕食の食材の収穫。
片品村では獣害に悩まされ、山に近い場所から耕作放棄が進んでおり、ここはそのような場所を借りたもの。この畑の周りには雑草が生い茂った耕作放棄地と見られる場所がいくつもありました。
手前の茶色に見えるのはレタス類。奥は森になっている。
指差しているのはルッコラ。ゴマに似た味が強く、みんながびっくりした。
キャベツはうまくいけば3回収穫できるという。
畑から見える武尊山(濃い色に見える山にのさらに奥。雲と似た色をしている。)
畑から戻って夕飯を自炊。
先ほど収穫した葉っぱ。真ん中にいるNさんの包丁裁きは見事だった。
高校生たちが炭火でトウモロコシを焼いてくれた。
Ⅱ 高校生たち
夕食が始まってしばらくしたところで、高校生のあやぱん による「地域活性化プロジェクト」のプレゼンテーション。
みんな聞き入っている。
紙には、『片品の当たり前の生活⇒持続可能な生活』、『村には「何もない」=豊かな生活』という言葉が続きます。片品村のよさに気づき、それを周り に広めようと無理に誘った同学年生が、3トンの木を入れる炭焼きに嵌ってしまったとのことです。そのほかのメンバーからも力強い言葉が聞けました。
尾瀬高校 の自然環境科では答えを教えない教育をしているとか、キリヤマさんたちの影響とかももちろんあるのでしょうが、地元の大切さや持続可能な生活、あるいは本 当の豊かな生活とは何かなどを考えている高校生はそれほど多くないのではないかと思います。夕食時に高校生が一緒に参加すると聞いたときには、なぜ参加す るか私には判らなかったのですが、納得できました。
もっとも、大量消費社会で持続可能でない暮らしをしている責任は私含め大人たちにあるのですが。
他のメンバーからもしっかりしたプレゼン。
Ⅲ キリヤマさんの話
キリヤマさんは片品に来て、2年ぐらいで村の人と信頼感が生まれ、車を譲ってもらったり、レンタルスキーのショップを貸してくれたりしているそうで す。季刊地域の表紙を飾った、牛小屋を改装して新居にする作業も進行中です。そのほか個人史をいろいろ話してもらいましたが、そこは省略。
炭アクセサリー。個展も開いたことがあるとのこと。
Ⅳ 炭焼き
翌日は、炭焼きをやっている尾瀬須藤林産 へ。
須藤さんは、もともと農業を営まれていて、村一番の農家になったとのことなのですが、減反政策になり、50歳を過ぎて炭焼きに転業されたとのことで す。木酢液というのはもともと片品村から始まったそうで、木酢液にかけてみようと、全国の炭で生活している人びとを見て回り、先端の人を研究されたとのこ とです。今は息子さんに譲られたのだと思いますが、子ども4人を大学に入れるなど炭焼きで自分ほどやってきた人はいないだろうと自負されていました。
竹を炭にしたところ
煙の中の水蒸気が煙突で冷やされた水となって容器に落ちる。それが木酢液
木酢液は、虫除けや消臭などに使われるものですが、このように炭焼きの煙突から作られているとは知りませんでした。須藤林産では手作りの機械で、木酢液を透明にして販売しています。
粉炭。人気があってなかなか手に入らないそうだ。
Ⅴ 遊楽木舎
次に訪ねたのは、遊楽木舎 。
オーナーのHさんから説明を受ける。
もともと、農林業を営んでいたHさんは、材木の価格が下がったので林業に見切りをつけ、グリーンツーリズムに転換したとのことでした。奥に見える施設を作り、リンゴを栽培して10年目ぐらいから経営が成り立つようになり、安心を届けられる質のよい農業を目指されています。
Hさんによれば、農家が畑を工場にしてしまったとのことで、大根であれば、5町歩ないと生計が成り立たないのですが、そうすると大根好きの虫しかいなくなくなります。狂牛病や口蹄疫も畜産を工業化したためだと考えられているそうです。
そのため、Hさんのところでは腹八分目農業を実践されていて、2割は自然に返すようしているそうで、減農薬も自然にできるということです。リンゴも 2メートルのピッチで植え、太陽と風が当たるようにしており、5年間は肥料も与えていないそうです。農薬は使いますが、3割程度の木酢液で薄めています。 雑草を味方にすれば土の保湿になり、虫もつかなくなるそうです。
試食させてもらった見事なリンゴ
リンゴの栽培について説明を受ける
昼食用のまんじゅう作り
この施設をHさんは、Iターンの人が来られるような「人の駅」にしたいとのことでした。人が集まって、「結」を復権させたいとか、10家族ぐらいの人たちがいろいろな仕事を分担しあって小さな共和国にしてはどうかとかいろいろなアイデアを話していただきました。