1月13日(水)に千歳船橋駅近くの”沖縄そば岡てつ”で「岡てつ教えて!公職選挙法のホントの話」という講演会がありました。そこへお客様として参加した、昨年4月の静岡市長選における公職選挙法違反の容疑で起訴されている斎藤まさしさんの話が衝撃的だったので、それを主に報告します。(文責:東)

【斎藤まさしさんのお話】

今日初めて(会場で配った)チラシを作った。まさかこういうことで逮捕されるとは思わなかった。本当にとんでもないことが起こっている。みなさんに知ってもらわないと危うい。何が公職選挙法に違反しているかがいまだに私自身もわからない。検察側は手の内を言わない。

公職選挙法ができた1950年は朝鮮戦争の年であった。普通選挙法ができたのは1925年であり、治安維持法とセットで日本が戦争に入っていく準備をしたということだ。

日本に自由な選挙が存在したことはない。本番の期間しか選挙運動ができないのでは、やるなといっているのと同じ。区議選ではチラシも撒けないとはどうやって選挙するのか。

公職選挙法の規定には選挙運動とは何かが書いていない。前の憲法のもとで1928年に、選挙運動とは、特定の選挙について、特定の候補者に投票させる直接または間接のもろもろの行為との判例がでた。治安維持法に反対した山本宣治が殺されたのは1929年で、そのあと明治時代の弁士中止のような選挙干渉が始まる。

戦後、アメリカが占領して当初実施したのは徹底した民主化だった。農地解放や教育の改革、税制改革、集大成が憲法だった。冷戦により占領政策を大転換し、レッドパージも行った。この過程で今の公職選挙法が作られている。だから戦前を踏襲することになった。選挙運動とは何かが書いていないのが大問題である。憲法が変わったのに選挙干渉の公職選挙法が踏襲され、最高裁が戦前の判例を踏襲(注)することになった。

(注) 事件番号: 昭和38(あ)984 事件名: 公職選挙法違反 裁判年月日: 昭和38年10月22日 法廷名: 最高裁判所第三小法廷
公職選挙法には選挙運動の定義規定は見当らないけれど も、同法を通読すれば、同法における選挙運動とは、特定の選挙の施行が予測せられ或は確定的となつた場合、特定の人がその選挙に立候補することが確定して 居るときは固より、その立候補が予測せられるときにおいても、その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若くは得しめる目的を以つて、直接または 間接に必要かつ有利な周旋、勧誘若くは誘導その他諸般の行為をなすことをいうものであると理解せられる。このことは、大審院以来判例の趣旨とするところで もある

何が違反であるか分からないので、警告制度が選挙に関してできた。総務省や選管はやっていいと絶対に言わない。最終的な判断は取締当局になる。そして個別の事例で確定するのは裁判になる。違法の恐れがあると警察が判断した場合は、警告をすることになっており、警告して再三同じことをするなら検挙すると言っている。警告されてやめたもので、そのあと立件された例はなかった。

今回、チラシ撒きの警告がありやめた。理由を聞いてもわからない。それから2ヶ月経ってから逮捕された。警告してやめて立件された事例があるか調べたがこんな例はない。弁護士会から警察庁に過去の事例があるか回答を要求したが拒否された。

判例では3要件である選挙特定、候補者特定、投票の依頼が定着している。それが3つそろわないチラシを使うことはOKだった。ところが、公訴事実は、高田とも子さんをよろしくお願いしますと声をかけながらチラシを配布したことが違法だという。チラシには書いていない。街頭でチラシを配る行為が、相手が投票してほしいと受け取ったら投票依頼だと検察は主張している。3要件を崩すようになっている。やっとここまで勝ち取ってきた選挙運動が今またひっくり返そうとしている。

実際上、憲法9条は壊れている。緊急事態条項が入れば憲法改正はいらない。今回の公選法の裁判で有罪の判例ができれば実際上、選挙運動もできなくなる。

5月26日にTPP反対集会の開始時刻に逮捕状を執行された。この事件をこれだけで見ても分からない。もし、これで有罪になったら気に入らないやつの選挙はつぶせる。事前のチラシがだめとなったら選挙干渉の始まり。

質問)選挙運動が政治活動と別れているのが問題では?
回答)本来、選挙運動は政治活動の一部だが、警察、検察以外に判断できないのが問題だ。警告制度さえ反故にしようとしている。政治活動をできないようにしようとしている。今回ここまできている。少なくとも今度の夏の選挙までは有罪判決をだされたくない。参議院選挙、衆議院選挙が下手をすれば最後ではないか。無党派の新人はこれから当選することは厳しい。

質問)警察は公安か?
回答)担当は違うが、実際には総動員している。

質問)よその国では規制はない。人権侵害とみなされる。たとえばアムネスティなど国際世論に訴えるのはどうか?
回答)国際機関に働きかけるのはいいアイデア。不正選挙というより怖い。だからといってビビらないでください。今まだあるときに使わないと止めることは難しい。選挙をどうやって勝つか考えてほしいし、裁判も注目していほしい。

選挙干渉裁判チェックの会  ~不当な選挙干渉とたたかう裁判を支援する会~

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【第1部】公職選挙法の基本知識

講師は桐山洋平さん。渋谷にあるIT企業のエンジニア。2015年4月に岡てつさんが世田谷区議選に立候補した時にお手伝いし、区議選で選挙期間中は政策ビラを配れないが、区長選挙では配れることを知り疑問に思ったとのこと。定数50名のところに立候補者は82名で、公明党、共産党、世田谷行革は立候補者全員当選したが、無所属新人の14名は一人も当選できない結果に終わった。

桐山さんは、日本の選挙権の歴史、海外との比較、公職選挙法の問題点を簡単に説明してくれました。いつまでアクセスできるか分かりませんが、資料がアップされているのでご覧ください。

http://25.gigafile.nu/je156a4d4ca364a39923c8896c7911dbe-0121

いくつか興味深い内容があります。

男子普通選挙の導入と選挙運動規制
http://repository.hyogo-u.ac.jp/dspace/bitstream/10132/11058/1/AA119847890440010.pdf

1925年に導入された男子普通選挙制度は、国民大衆の広範な政治参加への道を開きながら、同時にそれを裏切る厳しい選挙運動規制や罰則規定が盛り込まれた。戸別訪問の禁止をはじめ、供託金制度、選挙事務所数や運動員、選挙費用の制限等々の厳しい選挙運動規制の精神は、戦後の1950年に制定された現行公職選挙法にも生き残り、現在に至っている。 こう した規制は欧米先進国では見られない特殊日本的規制である。 普選制は、一部の利益を代表する者があたかも全体の代表を標榜するような表象をもつ制度である。すなわち、普選の中からルイ・ ボナパルトが皇帝となり、普選の中からナチスが登場した歴史的事実は、普選の論理と国民統合の手段としてのナチズムとが親和性があることを示唆する。

一般社団法人リンカーンフォーラム:選挙期間前の公開討論会のノウハウを持っている

【第2部】岡てつさんx 桐山さんのトークセッション

岡田てつおさん(以下、岡))政治活動はかなりできるが本番では限られている。実務上ははがき、ポスター、大きい選挙はビラ、期間中の選挙カー。

選挙現場で経験したこととしては、「選挙フェスで音楽を通して街頭演説はいいか?」、「ライブをただで見せるのは利益供与でないか?」などということがあった。喜納昌吉が立候補した時、歌を街頭で演奏した。民主党の選対から危ないのではないかとも言われたが、総務省に確認しても答えられなかった。選挙を通して一回も警告がなかったから喜納さんが演説するときは歌を歌う。それを拡大させたのが選挙フェスだ。べからずで書かれていないことを如何につぶすかということ。

全国まわると各地で警察が見に来る。警察によって規制するポイントが違う。たとえば、名前のぼりは個人演説会会場のみとなっているが、渋谷では、「ステージにのぼりはやめてくれ。街宣車の上ならよい」と言われ、広島は、「名前のぼりは個人演説会場しかだめで街宣車はだめ。」と言われた。

桐山洋平さん(以下、桐))ノウハウがないと手探り。ノウハウをためている政党が有利になる。

岡)いままで、どこの陣営もお咎めなかったところがお咎めにあっている。

桐)時期に応じて変わるのは与党にリークされているのか。

岡)当人にきいてみたらよい。ポスティングで住居不法侵入で立件されたことがある。何をやってよくて、何がだめなのか不安材料になる。

桐)街頭演説で歩み寄ってくれるのは勇気づけられる。

岡)ビラをもらう人は複数の候補のものをもらう。あとは選挙公報しかない。

桐)選挙公報の小さいスペースでは比べる材料もない。

岡)区議選でビラを配りたい。区議の場合は全く配れない。国政選挙なら配れる。選挙が始まったら終わっているのが今の制度。

1月13日 公職選挙法のホントの話

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